おもちゃを届けて終わりではない。学び合い・つながり合う場づくりを

あそびのむし事業では、難病児が夢中になって遊べるおもちゃセットを全国の施設に寄贈してきました。2019~2020年度の第1弾から2025年度の第3弾まで、寄贈施設の数は、全国で360カ所にのぼります。

そんなあそびのむしで大切にしてきたのは、おもちゃ・遊びの研修です。
おもちゃを届けて終わりではなく、それを使いこなしてほしい。寄贈先施設と私達、また施設同士でつながれる場を作りたいという思いから、学びと交流のための研修を行ってきました。

今回の記事では、第3弾配布先向けのオンライン研修会、年間を通して行ったオンラインセミナーについてご紹介します。

あそびのむし第3弾の寄贈先施設は、全国120カ所です。
そのすべての施設が参加したオンライン研修会が、3月18日、25日の2日間にわたって行われました。

両日とも講演とおもちゃの実践セミナーという構成で、事前に送っていただいた写真をもとに、皆さんの施設を紹介する一コマもありました。

森庸祐先生(森医院こどもクリニック 院長/芸術と遊び創造協会 理事)

小児科医の森庸祐先生は、子どもの発達とおもちゃとの関わりについて説明し、「遊びとは何か」という根源的な問題について、古い時代の日本語の意味にも触れながらお話しされました。

「遊びには目的はない。『〇〇のため』という目的を持たせたら、それは遊びではない」と、純粋に遊ぶことの大切さを、さまざまなお子さんとの関わりの例を挙げて話されたことが印象的でした。

鈴木八朗先生(くらき永田保育園 園長/芸術と遊び創造協会 理事)

横浜にある保育園の園長を務める鈴木先生は、医療的ケアで管理され、主体的な存在になりにくい子どもでも、遊ぶことで主体性を発揮し、世界を肯定的に考える時間を持てるようになると語りました。そして、難病児に寄り添う施設スタッフの方たちの役割の重要性について改めて触れ、「ケアする/される」ではなく、一緒に「面白い」を見つけるパートナーになれるようにというメッセージを伝えてくださいました。

参加施設の皆さんからは、
「どちらの先生の講演でも『遊びとは何か』『どうして大切なのか』ということを改めて確認できてよかった」
という感想が多数寄せられました。

開催に先駆けて事前アンケートを行い、各施設に届いているあそびのむしのおもちゃセットについて知りたいことを募っていました。

それに応える形で、遊びのスペシャリストであり、病児の遊び支援に関わってきたおもちゃコンサルタントの皆さんが、おもちゃを活用してさまざまな遊びを展開。すぐに実践できるアイデアを紹介しました。

また、質問の多かった、木のおもちゃのメンテナンス方法についても
「塗装されたおもちゃの汚れなら、消しゴムをかけてみてください」
「割れた部分を補修するときは、木工用ボンドを薄くのばして圧着してください」
と、具体的な方法を説明しました。

参加施設の皆さんからは、
「すぐに真似できそうなアイデアをたくさん教えてもらえました」
「発想次第で遊び方は無限に広がるとわかりました」
といった感想が寄せられました。

最後に、寄贈施設の皆さんから募った、おもちゃセットを開封したときの写真、遊んでいる様子などの写真を共有。
なかなか見る機会のない、他の施設のリアルな様子に触れられたことも好評でした。

オンラインセミナー「あそびのむし広場」では、スキルアップセミナーと、セットのおもちゃで遊ぶ回、全12回を開催しました。参加対象者は、あそびのむしセットの寄贈施設の方を中心に、難病児の遊び支援に関わる方、興味のある方ならどなたでもOK。オープンな場となりました。

スキルアップセミナーには、児童発達支援施設にお勤めの方、理学療法士の方などなどさまざまな専門家を招き、難病児の遊び支援の実践例や、大切にしていることをお話いただきました。

セットのおもちゃで遊ぶ回は、毎回「ご準備いただくもの」として、セットのおもちゃや身近にあるものを指定。そして、それぞれの施設でオンラインの画面を見ながら、利用者のお子さんたちも一緒に参加いただくことをめざしました。

例えば「音遊び」をテーマにした回では、セットのおもちゃのほか、新聞紙や水を入れたペットボトルなどを準備いただき、さまざまな音を出して楽しみました。

また、施設紹介の時間も設け、参加者の方にご自身の施設での実践を発表していただきました。一方的に聞くだけでなく、一緒に遊んで、自分たちの取り組みを紹介してと、双方向性を活かしたオンラインセミナーとなりました。

芸術と遊び創造協会で、あそびのむし第1弾から事業を担当するスタッフは、研修を大切にしている理由について次のように語りました。

芸術と遊び創造協会 遠藤:

「第1弾、第2弾の時は正直、おもちゃセットを届けるので精いっぱいでした。でも、寄贈後、施設の皆さんからさまざまなお声をいただきました。

『せっかくおもちゃをもらったけれど、使い方がわからない』
『遊びの情報がもっと欲しい』
『他の施設や、おもちゃコンサルタントの資格を持つ人とつながりたい』

そんなお声を受けて、ただおもちゃを手渡すだけではなくて、使いこなしてもらうためにアフターフォローや研修が重要だと感じました。そこで、オンラインでつながりあえるような場を作ることをと考えました。

最初は2024年度から、寄贈先施設だけを対象にスタートしたのですが、2025年度に第3弾の寄贈が決まったタイミングで、どなたでも参加できるようなシリーズにしました。

繰り返し開催するうちに、施設の皆さんの変化を感じていました。おもちゃコンサルタントが遊びのアイデアを紹介すると、すかさず一緒に実践したり、最初はスタッフの方だけで参加していたのが、利用者のお子さんと一緒に参加してくれるようになったり。

また、施設紹介コーナーも、回を重ねるごとに「発表したいです」という方が増えていきました。嬉しかったですね。そのつながりが、「病児の遊びケア・フォーラム2026」の実践報告リレーに結実したのだと思います。

あそびのむしの寄贈施設が全国360か所に増えたことで、ますます横のつながりも広がっていくと思います。

今後もスキルアップセミナーや、病児の遊びケアフォーラムなど、学び合い、つながりあう場づくりを続けていきます。寄贈施設の皆さんには、そういった場を積極的に利用して、あそびのむしセットを長く活用していただきたいですね。」