2026年5月9日、福岡おもちゃ美術館にて、福岡県内であそびのむしセットの寄贈を受けた施設の皆さんへの贈呈式が行われました。
式典の後のトークセッションでは、各施設でどのようにセットのおもちゃが活用されているか、お子さんたちの様子や遊び方のアイデアが語られました。そんな現場のリアルな声を中心に、贈呈式の様子をご紹介します。
福岡県内の4施設が贈呈式に参加
今回の贈呈式に参加くださったのは、福岡にある4つの施設の皆さんです。
◆児童発達支援 放課後等デイサービス・ブルースター
(株式会社フィールド )

◆福岡大学筑紫病院 小児科

◆小倉医療センター

◆インクルーシブな子育ての会 Elephan’ts step

おもちゃの活用方法や子どもたちの反応は?リアルな声が聞けたたトークセッション
後半はトークセッション。司会を務めた東京おもちゃ美術館の石井エグゼクティブ・ディレクターは、あそびのむしプロジェクトの立ち上げに関わり、2022年から2024年まで福岡おもちゃ美術館の館長も務めていて、福岡にも深いかかわりがあります。
石井の進行で、実際に「あそびのむし」のおもちゃがどのように活用されているか、各施設の皆さんにお聞きしました。

ブルースター スタッフ 毛利 綾子さん

ブルースター スタッフ
毛利 綾子さん
ブルースターは発達支援と放課後デイサービス施設で、2歳~高校1年生までと利用者の年齢もさまざまです。
あそびのむしのセットにはいろいろなおもちゃがあるので、音の出るものなどは年齢の高い子でも楽しんでいます。
気候のいいときには、おもちゃを持って屋外に出ることもあります。
透明なパーツを組み合わせて遊ぶ『オクトンズ』は、光が当たるときれいですよね。地面にできる影を楽しんだりもしています。また、『スタッキングビーカー』も、積み上げたり倒したり、いろいろな遊び方ができるので楽しんでいます。

オクトンズ

スタッキングビーカー

石井
『スタッキングビーカー』は遊び方がたくさんある、いいおもちゃです。
小さなビーカーを投げて、大きなビーカーでキャッチしたり、何かを隠して『どっちに入ってる?』とあてっこもできます。これからの季節は、水遊びにも活躍しますよ。

「スタッキングビーカー」では、あてっこ遊びもできます
福岡大学筑紫病院 臨床保育士 髙野 祥子さん

福岡大学筑紫病院 臨床保育士
髙野 祥子さん
あそびのむしセットのおもちゃがやって来て、プレイルームの空気ががらっと変わったと感じています。
押すとオルゴールのメロディーが流れる『森のメロディカー』は、きれいな音ですね。中学生も触ってみて「癒される~」なんて言っています。

森のメロディーカー
私は病棟内で唯一の保育士として、入院しているお子さんたちに日々接していますが、精神的にも、おもちゃに力をもらっていると感じます。
治療の最中でも、おもちゃは大活躍しています。例えばお子さんが保護者と離れて一人になる瞬間、点滴を抜くなど痛みがある瞬間に、『シャラシャラリング』をぱっと開いて見せると、気をそらしたり、不安をやわらげたりすることができます。

石井
医療の現場で、子どもの痛みや不安を和らげるために気をそらすことを『ディストラクション』と言いますが、おもちゃはそんなときにも効果的ですよね。

シャラシャラリングを開くおもちゃ美術館スタッフ
小倉医療センター 保育士 柴田 優子さん

小倉医療センター 保育士
柴田 優子さん
私たちの病院ではコロナ以降、プレイルームはあまり活用できていなくて、個別で部屋を訪問する時におもちゃを持って行って活用しています。
木のおもちゃは特に、手ざわりが良いのか、さわって楽しむ子どもたちが多いです。『バス』『森のメロディーカー』『カーブドミノ』などは人気ですね。

バス

カーブドミノ
そんな姿を見て、あるお母さんは『今まで、子どもに木のおもちゃを買ってあげたことがなかった』と、はっとしたようです。その場でおもちゃを検索して、購入されていました。
『どんぐり』は中学生の男子、女子、どちらにも人気です。『かわいい』『癒される」なんて言っています。見た目ももちろんですが、どんぐりが動くときの振動がベッドに伝わって、それも楽しいみたいです。本当にさまざまな遊び方があって、保育士としても発見が多いです。

どんぐり

リング

石井
振動を楽しむ遊びもいいですね。他に『リング』というおもちゃも、木のパーツが落ちてくるときの振動がハンドルに伝わっておもしろいですよ。
目の不自由な方や、お年寄りにもおすすめのおもちゃです。
Elephant’s step代表 堀田未歩さん

Elephant’s step代表
堀田未歩さん
障害を持つ子の親として、インクルーシブな子育ての会を主催し、誰でも参加できるイベントやワークショップなどの活動をしています。
あそびのむしのおもちゃは、障害のある子だけでなく、そのきょうだいも一緒になって遊ぶ姿が見られます。
障害児のお兄ちゃん・お姉ちゃんたちは、『マグフォーマー』や『オクトンズ』など、色がきれいなおもちゃを見せてあげるんです。
また、音の出るおもちゃを鳴らして聞かせてあげますが、音に敏感な子の場合、驚いて泣いてしまうこともあります。そんなとき、子ども同士でどうしたらいいかを考えているんです。私たち大人では考えつかないような方法を考えることもあって、やっぱり子どもってすごいなと思います。

マグフォーマー
普段の活動で、あそびのむしのおもちゃと、他のおもちゃを一緒に出して使うこともあるのですが、障害のある子たちは、あそびのむしのおもちゃを選ぶことが多いですね。感覚に響くおもちゃが多いからではないかと思います。

石井
おっしゃるように、セットのおもちゃは『感覚に訴えるもの』という観点で選んでいます。音、色、動き、手触りなど、さまざまな感覚を楽しんでほしいですね。
堀田さんは、私が福岡おもちゃ美術館の館長をしている頃、お子さんをバギーにのせて遊びに来てくれたんですよね。
そのとき『友達を30人連れてくるから、福岡おもちゃ美術館を貸し切りにさせて!』と言われ、その発想やパワーに思わず感動してしまいました。
東京おもちゃ美術館で行っていた、難病児とその家族のための貸し切りデー『スマイルデー』を、福岡でもしたいと思っていた矢先でしたので、福岡での『スマイルデー』開催の大きな力になりました。
子どもたちの笑顔のために、多様な人がつながりあうことの大切さ
参加施設の皆さんは、お互いの話に時折大きく頷きながら、熱心に聞いていらっしゃいました。他の施設の様子を知ることができる、有意義な機会だったようです。
トークセッションの最後に、Elephant’s step代表の堀田さんは、障がいのある子の親として経験から、こう語りました。
「私はコロナ中の出産だったので、部屋からも出られず、病棟保育士さんも長時間滞在できないという状況で、孤独を感じていました。でも、こうしていろいろな人たちとつながると、希望が膨らんでいくのを感じます。
障害や病気のある子どもを育てているお母さんたちは、かつての私のようにケアで精一杯で、子どもの笑顔のために何が必要なのか、調べる余裕がありません。
そんなときに、あそびのむしのような取り組みで、専門家が関わってくれることが有効だと思います。これからも、皆さんとつながっていきたいです。」
あそびのむしの取り組みの意義を改めて感じるような言葉に、会場でも大きな拍手が起こりました。石井からは、
「遊びのことなら、赤エプロンのおもちゃ学芸員、おもちゃコンサルタントの皆さんもついています。いつでもお手伝いに行きますよ!」
と力強い言葉もありました。
今後も難病の子どもたちの笑顔が少しでも増えていくよう、施設の皆さんと、おもちゃ美術館・おもちゃコンサルタントの皆さんがつながりあっていきたいですね。
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