5月31日、「病児の遊びとおもちゃケア・フォーラム2026」が、東京・代々木のオリンピックセンターにて行われました。
この会は難病・障害のある子どもたちに関わる方が集い、心の栄養である「遊び」を届ける活動について学び合う場です。
記念すべき20回目となる今回は、これまでで最多の約600名が参加。
その中には「あそびのむし」のおもちゃセット寄贈先360施設の方も多数含まれ、北海道から沖縄まで、全国各地から集まっていただきました。
遊びについて考えるフォーラムですので、会場の各所におもちゃや遊びがあり、参加者の笑顔があふれる、和やかな雰囲気でした。
そんな「病児の遊びとおもちゃケア・フォーラム2026」の模様を3回に分けてお届けします。今回は、全体会と、ホワイエでの遊び体験コーナーのレポートです。
病児の遊びケアの「これまで」「これから」を語る全体会
午前中に行われた全体会では、「病児の遊びケア これまでとこれから ~あそびのむしで好きなことに夢中になる~」と題して、2つのトークセッションが行われました。
満席のホールには、病院や施設の看護師、保育士、作業療法士、プレイリーダー、おもちゃコンサルタントなど支援に関わる方たち、また、医療的ケア児、障害児とその家族などが集いました。
トークセッション1
「病気のこどもとこどもに関わるすべての人に遊びで心の栄養を」
【登壇者】
- 山田心(東京おもちゃ美術館 館長)
- 森智恵子(神奈川県立こども医療センター 病児と家族のおもちゃと遊びのボランティア シャボン玉/おもちゃコンサルタントマスター)
- 石井今日子(東京おもちゃ美術館 エグゼクティブ・ディレクター)
【進行】
小笠原愛(アナウンサー/おもちゃコンサルタント)

1つめのトークセッションのテーマは、芸術と遊び創造協会・東京おもちゃ美術館による病児の遊び支援が始まった経緯や取り組みの紹介です。
難病児とその家族のための貸し切りデー「スマイルデー」のはじまり、コロナ禍でボランティア活動ができなくなった時期にオンラインで遊びを届けた取り組みなどについて、振り返りました。
おもちゃコンサルタントマスターで、神奈川県立こども医療センターで遊びのボランティアを続ける森智恵子さんは、活動を続ける中で病院スタッフの理解や関心が高まっていったことを振り返り、「子どもたちに『また来てね』と言われるのが何より嬉しい」と語りました。

トークセッション2
「未来に向かって これからの病児の遊び支援」
【登壇者】
- 星野真里(女優)
- 井村弘子(長崎県医療的ケア児支援センター「つなぐ」 副センタ―長/言語聴覚士)
- 中嶋弓子(東京おでかけプロジェクト 代表)
【進行】
石井今日子(東京おもちゃ美術館 エグゼクティブ・ディレクター)

難病を患う我が子との暮らしを綴った著書「さいごにきみと笑うのだ」が話題の星野真里さん、あそびのむしのおもちゃセットを車に積み込み、さまざまな子どもたちを訪問している井村弘子さん、障害児とその家族の「お出かけ」を支援する団体を立ち上げた中嶋弓子さんが登壇。難病児とその家族に必要なサポートについて、それぞれの立場から語りました。
ここでもキーワードは、「遊ぶこと」や「自分の好きなことをする時間」の大切さです。
星野さんは、家族で東京おもちゃ美術館を訪れた際に、自分自身が本気で楽しんで、できなかった皿回しも練習したというエピソードを披露してくださいました。
おもちゃを届けるために車で走った距離が2000キロ(!)に達したという井村さんは、多くの子どもたちの遊びを見守る中で、「どんな子どもも心の中は自由で、汗をかいて遊びまわっている。可能性をこちらで決めてはいけない」と感じたことを語りました。
中島さんは、おでかけ支援の団体を立ち上げたきっかけとして、「子どもを連れて外出すると、周囲に迷惑をかけるのではないかと考えてしまう。人の目が怖い」という保護者の声を紹介。「バリアフリーも大事だけれど、人の意識を変えないといけない」と、難病児だけでなく、その家族や社会全体を巻き込む取り組みの重要性を語りました。
遊びの力を実感!遊び体験コーナー
全体会の余韻が残るホールからホワイエへ出ると、体験・交流型の4つのブースが用意されていました。
1. あそびのむしセットのおもちゃで遊ぼう

「あそびのむし」セットのカラフルなおもちゃがマットの上に並んだ一角では、実際におもちゃに触って遊ぶことができます。ツリーチャイムやグロッケンの心地よい音に惹かれ、見慣れないおもちゃ、色や形の美しいおもちゃに目を留める方たちに、赤いエプロンをつけたおもちゃコンサルタントが遊び方を紹介していきます。
木のおもちゃチッタ店主でおもちゃコンサルタントマスターの横尾泉さんも、おもちゃを組み合わせて遊びを広げるアイデアを伝えていました。
歯車を組み合わせるパズルは、歯車だけでも独楽のように回せること、さらには坂道を転がす遊びにも発展させることができます。
参加者の皆さんは、笑顔で遊びながらも、熱心に説明を聞いていました。
【参加者の声】
一つひとつのおもちゃにさまざまな遊びの方法があること。また、遊び方は決まっていないことを実際に体験できました。これから子どもたちと一緒に、自由な発想の中でたくさんの遊び方を見つけていくヒントが貰えました。
2. ユニバーサルフレーム デモンストレーション

サッカーゴールのような金属の柱で囲まれた「ユニバーサルフレーム」。柱のあちこちから伸びている強力なゴムで体を支え、座る姿勢、立つ姿勢をキープできるというものです。
理学療法士である安田一貴さん、大西海斗さんが、参加者のご家族に声をかけて、体験を促していました。
普段は子ども用車椅子に乗っている子も、体をまっすぐに伸ばして立ち、両手でおもちゃを抱えて、お母さんと向かい合って遊んでいます。
安田さんは、「ふだんできない姿勢をとることで、いつもとは違う遊びが可能になります。そんな『できた』という体験をたくさんしてもらいたいです」と語りました。
【参加者の声】
障害のあるお子さんが実際に遊んでいる姿が見られて、参考になりました。
3. ただじゅんのあそびっこ

全体会のオープニングで、獅子舞のパフォーマンスを披露した「ただじゅん」こと多田純也さんは、児童演劇に長年携わり、保育士への遊び研修も行っている遊びの達人です。
そんなただじゅんさんのワークショップコーナーには、100種類以上もの遊びのお品書きが!手遊び、歌遊び、簡単な工作などを、参加者のリクエストに応じて実演。近くで見ている人もどんどん巻き込まれ、遊びの輪が広がっていきます。
病院や施設で接する子どもたちを笑顔にしたいという思いで参加した人たちも、自分自身が遊びを体験。この楽しさは、それぞれの方の現場で子どもたちに伝わっていくことでしょう。

また、共に舞台に上がったちんどん屋のちんどん豆助さんとともに、車いすやストレッチャーの子どもを囲んで演奏する場面も見られました。
思わず踊り出したくなるような演奏に、お子さんもリズムや振動を体全体で受け止め、楽しそうにしていました。
【参加者の声】
多田さんのワークショップで『獅子』を作りました。折り方は簡単でしたが色々な顔で作れるとのことなので子どもたちと作って遊びたいと思いました。
4. 「すごい後藤さん」と一緒にジャグリング・皿回しの達人になろう

ジャグリングパフォーマーでおもちゃコンサルタントの後藤学さんは「すごい後藤さん」と呼ばれています。その理由は、ホウキやジョウロなど、身近なものであざやかなジャグリングパフォーマンスを繰り広げるから。そして、見ている人を笑顔にし、「自分もやってみたい」と思わせる明るいパワーの持ち主だからです。
後藤さんの周りでは、全体会で星野真理さんも披露した皿回しが大人気でした。
後藤さんが軽やかに回すお皿に見とれていると、「さあやってみて」と、参加者にも棒とお皿が手渡されます。
「お皿のふちに沿って棒を動かして」
「たまごをかきまぜるときの動きと同じだよ」
とアドバイスを受けながら、みんな夢中で挑戦しています。
子どもたちやご家族を笑顔にしたくて、長年病院を訪問してパフォーマンスを続けている後藤さん。多くの人にジャグリングのコツも伝授していますが、「今日の参加者の方々はみんな真剣。皿回しを覚えて、子どもたちに見せてあげたいという気持ちを感じるので、こちらも何とかできるようになってもらいたいなと思います」と語りました。

【参加者の声】
- 皿回しに挑戦しました。なかなか回せなかったのですが、途中で後藤さんが一緒に持って回してくれた感覚や「もう少し自分の方に倒して」のアドバイスを受けて、なんとか2回自分で回す事ができ、とても嬉しかったです。大人でも「回すまでは帰らない」と思うほど夢中になって遊んでいました。
- 皿回しでは楽しくて夢中になり遊んでいる同僚、そして自分。大人になり、夢中になって遊ぶことがなかなか無かったので、遊ぶことの楽しさを久しぶりに感じられた有意義な時間になりました。
参加者みんなが「あそびのむし」に!
4つのブースは病児の遊び支援の多様なアプローチに触れるとともに、参加者自身も遊びの力を体験できる場となりました。
会場に広がるたくさんの笑顔が「遊びのもつ力」「好きな遊びで夢中になることの大切さ」を証明しているようでした。