「病児の遊びとおもちゃケア・フォーラム2026」レポート2 7分でつながる !病児の遊びケア実践発表リレー

難病児の遊び支援にまつわるさまざまな取り組みをする方たちが一堂に会した「病児の遊びとおもちゃケア・フォーラム2026」。午後はさまざまなテーマの分科会が行われました。

中でも「あそびのむし」セット寄贈施設の皆さんによる実践発表の分科会は、出入り自由というオープンな環境で行われたこともあり、多くの方が代わる代わる会場を訪れていました。

他の施設では、おもちゃをどんな風に活用しているの?
遊びのアイデアをもっと知りたい!
そんな方々が集まった「7分でつながる!病児の遊びケア実践発表リレー」の模様をレポートします。

今回の実践発表では、6つの施設の方の7分間の発表をもとに、進行役のおもちゃコンサルタントマスター・加藤理香さん、アドバイザーの東京おもちゃ美術館・岡田哲也ディレクターが、会場の皆さんと一緒に遊びアイデアを広げていく形式で進められました。

司会進行:加藤理香さん
(おもちゃコンサルタントマスター)

遊びの達人・東京おもちゃ美術館の
岡田ディレクター。

発表者だけでなく、参加者にも同じ「あそびのむし」のおもちゃを使っている施設の方が多く、お互いに知恵を出し合うような場面も多くみられました。

濱田 奈央さん(佐川おもちゃ美術館/おもちゃコンサルタント)

この分科会のアシスタントも務めたおもちゃコンサルトの濱田さんは、高知県・佐川町にあるおもちゃ美術館での取り組みを発表してくださいました。

重症児デイサービス施設からの「親子遠足に行きたい」との申し出を受けて、重症児・医療的ケア児とその家族、30組97名を受け入れたそうです。佐川おもちゃ美術館はあそびのむしセットの寄贈を受け、研修にも参加して受け入れ準備を進めました。

当日は館内を貸切にし、おもちゃコンサルタントやおもちゃ学芸員を含む95名のスタッフで皆さんをお迎えしたそうです。

高知新聞PLUSデジタル 2023.11.21 08:26

「重症心身障害児が木の玩具で交流 笑顔あふれる 高知県佐川町に150人」
https://www.kochinews.co.jp/article/detail/698039
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来館された方たちには大好評で「きょうだい児もとても楽しみにしていた」「スタッフが各所で声をかけてくれて安心できた」という感想が届きました。
中でも「社会の中で自分たちの居場所があると感じられた」という感想が強く印象に残ったと語る濱田さん。難病児・障害児のいる家族の多くは周囲を気にし、外出に不安を抱えていることを改めて思い知ったそうです。

今後は施設単位でなく、個人でも参加できるスマイルデーも企画しているそうで、「できない理由ではなく、いかにして実現できるのかを考えたい」と抱負を述べました。

アドバイザーの東京おもちゃ美術館・岡田ディレクターは、

「お子さんの一人がツリーチャイムをにぎにぎして感触を楽しんでいたというエピソードがありましたが、楽器のおもちゃは演奏するだけではありません。握るとひんやりするといった感触も大事な遊びです。
また、音からイメージを膨らませたり、『音が聞こえたら手を上げよう』という遊びもできますね。ぜひ、いろいろ試して、お子さんの『好き』を見つけてください」

と語りました。

照屋 建竜さん(児童デイサービスひまわりKidsみどり町)

沖縄県うるま市からご参加の照屋さんは、利用者の5歳の男の子の事例を報告してくださいました。

そのお子さんは音の出るおもちゃと、口の感覚遊びが大好きですが、下唇などを出血するほど強く噛んでしまう癖があります。感覚遊びと安全を両立させるためにどうしたらいいか試行錯誤を繰り返していたところ、セットのおもちゃ「スクイグス」の緑色のパーツがぴったりだったことがわかりました。スクイグスは丈夫なシリコン製で噛んでもちぎれることがなく、握りやすい形です。

もし同じ悩みをもつお子さんがいたら参考になるのではないかと、今回の発表に名乗りを上げてくださった照屋さん。「危ないからやめようではなく、どうしたら安全に楽しめるのかを考えていきたい」と語りました。

※スクイグスにはさまざまな大きさ、形状のパーツがあり、メーカーでは口に入れる遊びを推奨していません。使用の場合は大人の見ているところで、安全に十分注意してください。

東京おもちゃ美術館の岡田からは、
「スクイグスは、くっつけて離すときの音も楽しいし、水遊びにも使えます。いろんなところにくっつけてみてください」
という話がありました。なんと、体にもくっつくそうです!

福盛朱里さん(訪問看護ステーションリコス)

兵庫県姫路市にある訪問看護ステーションで作業療法士として働く福盛さんは、「あそびのむしセットの寄贈を受けるまで、施設にはほとんどおもちゃがなかった」と語りました。理由は子どもたちの命をつなぐための医療的ケアがどうしても優先されてしまうから。同じ理由で、訪問先のお宅にもおもちゃがないことは珍しくないそうです。
ですが、子どもの発達や生活の質の向上のため、医療的ケアで管理された日常を彩る「遊び」は重要だと考え、セットの寄贈を受けることになりました。

届いたおもちゃを開封する際には、ホテルのレセプションルームを借りて「おもちゃオープニングパーティ」を開催。予想を上回る13組のご家族が参加されたそうです。

満員の会場で楽しそうな笑顔を見せる参加者を見て、おもちゃは人を笑顔にし、人をつなぐものだと改めて感じたと語りました。また、家族での外出がなかなか難しいなか、保護者同士の交流を求める方も多いことがわかったそうです。
「今後も、難病のお子さんとご家族が社会参加できる場所、遊べる場所を作っていきたい」と締めくくりました。

司会の加藤さんからの
「他にも、ご家族同士の交流の場を設けている施設はありますか?」
という問いかけに応えて、次のような声が寄せられました。

  • 同じく訪問看護ステーションだが、毎年体育館を借りてクリスマス会をしている。ピアニストなど演奏家を招いて音楽を楽しんでいる。
  • 近隣で同じ「あそびのむし」セットを持つ施設があるので、一緒にイベントをしている。
  • 放課後等デイサービスで、保護者にも子どもと同じプログラムを体験してもらうことがある。

市原真理さん(NPO法人福祉広場 児童発達支援事業所ひろば・まるんなひろば/おもちゃコンサルタント)

大きな布を何人かで持ち、ふわりと動かすパラバルーン。おもちゃコンサルタントでもある市原さんは、さまざまな手作りのパラバルーンで遊んだ様子を報告してくださいました。

中でも、透ける素材であるオーガンジーの布にプロジェクターで映像を投影するパラバルーンでは、映像が床や壁などにも映った様子が見られ、参加者からも思わず歓声があがりました。

また、あるお子さんがパラバルーンに映る映像を見て思わず「あ!」と指差したそうですが、そのお子さんにとってそれが生まれてはじめての指差しだったそうです。おもちゃコンサルタント養成講座でよく語られる「心が動けば体が動く」ということを改めて実感したと語りました。

【参加者の声】

現場での取り組みがとても参考になりました。パラバルーンの使用方法は事業所でも取り入れられそうで、持ち帰り検討したいと思います。

片岡諒太さん(横浜市多機能型拠点こまち 左近山特別支援学校内放課後等デイサービスたんぽぽ)

片岡さんがお勤めの放課後等デイサービスは、支援学校と渡り廊下1本でつながっているという立地だそうです。コミュニケーションを促すおもちゃが、人と人とのつながりを生んでいるという事例を報告してくださいました。
例えば、子ども同士で「シャラシャラリング」のチューブの両端を持ち、リングを行ったり来たりさせると、自分の動きで相手の方へリングが移動し、相手の反応も楽しめます。

また、それぞれ音の出るおもちゃを持って輪になり、音楽にあわせて鳴らしていると、周囲の子どもの様子が目に入って、自分の遊びも変わっていきます。
おもちゃを組み合わせ、ルールを考えてゲームを作ったお子さんの例も、動画で見せてくださいました。

こうして、セットのおもちゃによって遊びの幅が広がり、遊びがのびやかになったと感じているそうです。今後は「つながるチカラ」を活かして他の事業所ともつながり、地域支援につなげたいと語りました。

司会の加藤さんから
「こんなおもちゃの組み合わせが面白かったというアイデアのある方がいたら、教えてください」
という呼びかけがあると、次のような事例が報告されました。

  • マグフォーマーの穴の中からシフォンスカーフを引き出す遊び。
  • どんぐりの坂に、スティッキーの棒などいろんなものを転がした。自分も滑ろうとしていたのがかわいかった

また、アドバイザーの岡田からは
「輪になって遊びを見せ合うのはいいですね。他の人の遊ぶ姿には、説明書の何倍もの情報がつまっていて、子どもの遊びたい気持ちを引き出すことができます」
というコメントがありました。

増子邦行さん(特定非営利活動法人フローレンス)

医療的ケア児、人工呼吸器が必要なお子さんなど、約80名の家庭に訪問している施設で、発達支援員をしているという増子さんは、さまざまな方法での支援について発表してくださいました。

利用者の約半分は未就学児とのことですが、「子どもとどう遊んだらいいかわからない」というご家族は多いそうです。そんな家庭に訪問する際、あそびのむしセットは活躍しているそうで、特に「ツリーチャイム」「シフォンスカーフ」「シャラシャラリング」などを持っていくことが多いそうです。

また、絵本を読むときに触覚、聴覚も使って楽しめるよう、音の出るおもちゃを活用している様子も動画で見せていただきました。
さらには、同じ境遇の保護者同士で交流したいという声にこたえて、オンラインの交流会を企画されたそうです。とても好評だったので、毎朝9時から「朝の会」として継続していることを話してくださいました。

【参加者の声】

他事業所ではあそびのむしセットをどのようにして活用しているのかを目の当たりにでき、新たな発見に繋がる実践報告であった。子どもたちの意欲を伸ばし一緒に楽しめるイチ職員でありたいと思えた。

あそびのむし寄贈施設の皆さんによる発表はどれも現場のリアルな実践であり、同じように現場に携わる参加者にとって学びや気づきが多かったようです。
同じおもちゃセットを使っている同士だからこその情報交換も多く、有意義な時間となっている様子がうかがえました。

貴重な実践を聞かせてくださった6名の方には、感謝を込めて皿回しセットがプレゼントされました。